前回の記事で自筆証書遺言の保管方法について記載しました。
前回の記事はこちら。
実はもう一つ改正が行われています。
それが財産目録の記載方法の緩和です。
この記事では財産目録記載方法を説明していきます。
財産目録の要件緩和について
前回の記事で記載しましたが、自筆証書の要件は、下記になります。
1.全文、日付、氏名を自署(パソコン入力、代筆不可)
2.押印
この様に全文を遺言者本人が自署しないといけなかったのですが、相続財産の全部もしくは一部の目録(財産目録)の記載については、自署しなくて良くなりました。
財産目録はどのような時に使うのか?
例えば多数の財産を持っている人が、複数の人に遺贈したり、相続させたい時に使います。
遺言本文抜粋
手書き部分
「相続人Aには別紙目録1記載の不動産を相続させる」
「相続人Bには別紙目録2記載の株式を相続させる」
「財団法人Cに別紙目録3記載の口座全額を遺贈する」
別紙財産目録
パソコン入力OK部分
1.土地 所在 ○○県○○市○○町1丁目 地番○○○番 地積 ○○㎡
2.株式 ○○証券株式会社 ○○支店 ○○口座 株式会社○○ 1000株
3.預金 ○○銀行株式会社 ○○支店 普通口座 ○○○○○○○
別紙財産目録の部分は手書きでなくてもOKです。パソコンで入力が可能になりました。
財産目録がないと、このようになります。
遺言本文抜粋
「相続人Aには○○県○○市○○町1丁目○番の宅地100㎡の土地を相続させる」
「相続人Bには○○証券株式会社○○支店○○口座保管の株式会社○○の株1000株を相続させる」
「財団法人○○には○○銀行株式会社○○支店普通口座○○○○○○○の全額を遺贈する」
いかがででしょうか?
手書きで上記を間違えないで書くだけでも大変ですよね。
まとめると、遺言書の本文は引き続き手書きが必要ですが、別紙財産目録記載部分は手書きでなくても良くなったということです。
世の中には不動産を一人で何十、何百と所有してる方もいます。
また高齢の方が手書きで長い文章を間違えないで書くのも大変なことは想像できると思います。
財産目録記載作成の注意点
・財産目録の作り方に特に決められた方法はありません。書き方は自由です。パソコンでも、遺言者本人以外が作成しても問題ありません。
・自署以外で作成した財産目録には遺言者の署名押印が必要です。また両面印刷した時には両面に署名押印が必要になります。複数ページにまたがる場合も、各ページに署名押印が必要です。
⇒財産目録を作る時は、パソコンでも大丈夫ですが、その財産目録の用紙には署名と押印が必須ということです。
・遺言書本文の用紙とは別の用紙での作成が必要です。
⇒手書きの遺言書本文が書かれた用紙に、パソコンで財産目録を入力するのは不可です。必ず遺言本文と別の用紙で作成しましょう。
財産目録の訂正方法
財産目録を印刷してから、訂正箇所が出てきた場合、財産目録の訂正方法は決められています。修正テープで消したりするのはダメです。
パソコン入力が可能になったので、再度訂正したものを印刷し直すのがベストだと思います。
訂正方法は自筆証書遺言本文の訂正方法と同じです。
実は自筆証書遺言の場合、訂正方法まで民法に定められています。
訂正方法を間違うと、訂正がなかったものとして扱われますので、十分に注意が必要です。
訂正方法はこの様に定められています。
・遺言者が訂正方法を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつその変更場所に印をおさなければいけません。
ちょっとイメージしづらいとは思いますが、まずは、訂正部分に二重線などを引いて、その部分に押印する。
そして本文外に、「3丁目4番を3丁目12番と改める」の様に記載をする必要があります。
間違えの仕方は色々なパターンがあるので、その都度訂正方法は確認が必要です。
長文を間違えないように、必死に丁寧に書いてきて、最後人名を1文字間違えてしまい、遺言の意味がなくなってしまったら、目も当てられませんので、訂正方法にも注意してください。
まとめ
2020年の相続法改正は始まったばかりで、今後色々問題点なども出てくるのではないかと思います。
ただ今回の改正を見ていると、少しでも相続トラブルを防ごうという意思が感じ取れます。
遺言を書きやすくするのも、遺言を書く人を増やしたいという方針なのだと思います。
遺言を書く人が増えれば相続トラブルが減少するのは、間違いないです。
家族を相続トラブルに巻き込まないためにも、遺言書の重要性を知る人が増えていただければと、願っています。