遺言と生前贈与。どちらがお得?

『遺言』と『生前贈与』はどちらがお得か?

こんな相談を受ける事が良くありますので、遺言と生前贈与の違いなどを説明していきます。

遺言も生前贈与も相続対策の一つとなります。

正直一般論として、どちらがお得かとは断言はできません。

その方の相続関係や財産の額、種類、そして家族との仲などによって、検討する事項が様々ですので、一概にどちらがお得かどうかは、ケース・バイ・ケースとなります。

そこで制度の比較をして、知識を深めてもらい、その上で、専門家(税理士等)の判断を仰ぐのが一番の対策になるかなと思います。

不動産を遺言で相続させる場合と生前贈与した場合の比較

遺言について

特徴:遺言者が死亡した時に効力が発生する。相続が発生した時点で所有権が移る。

手続き:遺言書の作成(公正証書遺言、自筆証書遺言など)

税金:相続税が発生する場合があり(財産額と相続人の数によって決まる)・不動産取得税が発生しない

登録免許税:不動産の相続登記時に発生、固定資産評価額の1000分の4

 

生前贈与について

特徴:生前に効力が発生。贈与した時点で所有権は移る。

手続き:贈与契約書の作成。口頭でも効果は発生するが、契約書作成するのが無難。

税金:贈与税が発生(相続税より税率が高い)・不動産取得税が発生。

登録免許税:不動産の移転登記時に発生、固定資産評価額の1000分の20

 

以上の様にそれぞれの制度には違いがあります。

大きな違いは生前に名義を変更するか、死後に名義が変わるかなのですが、費用面で違いが出来てきます。

特に生前贈与では贈与税と不動産取得税が発生して、名義変更の登記の際の登録免許税の額も、相続の名義変更に比べると高額となります。

これだけみると、生前贈与するメリットはない様に思われますが、以下のような場合にはメリットがあります。

・将来的に相続人間で争いになる可能性が高い場合

例えば、子供である兄弟間の仲が良くなく、自分が死んだ後にどちらかに渡すとなると、揉めてしまう可能性が高くなる場合などです。

生前に意思をはっきり出しておいた方が、トラブルを防げると考えられる時などです。

遺言の場合だと効果が発生するのが、故人の死後になるので、死人に口なし状態になってしまうからです。

・賃貸マンションなど賃料収入が発生する不動産を生前贈与する場合

この場合は高齢になって管理などが難しい場合に、早い段階で子供たちに任せられるメリットや、賃料収入が子供達の所得になることで、相続税の対策となる場合がありからです。

この様にその方の家族関係や財産の種類や額によって、対策の方法が変わってきます。

生前贈与をした方が良い場合は限られてきますが、遺言はすべての人が書いてもメリットがあります。

遺言作成のメリット

相続が発生して、トラブルになるのが一番多いのは、財産の分け方を決める時になります。

遺産分割協議と呼ばれていますが、なぜトラブルになりやすいのか?

それは相続人全員で故人の財産の行方を決定しないといけないからです。

お金の話を家族でするのって結構難しいですよね?

誰が不動産を貰うのか、○○銀行のお金は誰が貰うのかなどを、家族で話し合いますので、どうしてもトラブルになりやすいのです。

・個人の介護をした相続人と全く介護をしなかった相続人
・生前に家の頭金を出してもらった相続人と出してもらってない相続人

上記の様に生前に故人に対して、行ってきた事や、貰った金額が違うと、相続が発生した時に争いが表面化する事が多くなるからです。

他にも相続人の中に認知症の家族などがいると、成年後見人などを付けたりしないと、遺産分割協議ができなくなったりしますので、どうしても遺産分割協議はトラブルになりやすいのです。

それを防ぐためには遺言書であらかじめ誰に何を相続させるか決めておく事で、相続が発生した時のトラブルを回避する事が可能になります。

すべての財産について、しっかりとした遺言書を作成しておけば、遺産分割協議をする必要がなくなるからです。

この様に遺言書の作成は相続対策をする上で一番必要な作業になります。

まとめ

・生前贈与と遺言はどちらがお得か一概には決められない
・生前贈与は税金などが多くかかるが、必要になる家族もある
・遺言書は相続対策の基本であり、一番重要な対策になる