コロナ時代の遺言~特別方式による遺言作成~

今回は特別な状況下にある場合の遺言について説明していきます。

今年に入って、ご存知のように世界中でコロナが流行し、日常とは違う世の中になっています。

ニュースで聞くところによると、コロナに感染して重症化してしまうと、家族でさえ会う事ができずに、お亡くなりになってしまうこともあるようです。

コロナが流行する前に戻ってくれれば良いのですが、現状はすぐに終息は難しい状況です。

感染して、大切な家族とも会えないまま、最悪な事態を迎える可能性も充分にあります。

そんな時、家族の為を思って遺言を書いておきたいという方も増えていると聞きます。

 

今回は実際に感染にしてしまい、隔離された状況や死期が迫っている場合の遺言の残し方について、書いていきたいと思います。

※今回の記事は私が実際に業務として行ったものでもありませんし、実際にどのような運用がされるかは不明な状況での内容ですので、今回の方式を使って遺言書を残す場合は専門家に相談することをお勧めします。

特別方式の遺言

前回の記事「リンク:自筆証書の遺言について」で遺言には普通方式と特別方式があることを紹介しました。

今回はそのうちの特例方式を使用した遺言作成になります。

①死亡危急者遺言
②伝染病隔離者の遺言
③在船船の遺言
④船舶遭難者の遺言

このうち、①、②、③がコロナの状況下で当てはまる遺言作成になるかなと思います。

①死亡危急者遺言

遺言者死亡に瀕している場合の遺言です。その為、作成要件が緩和されています。

・証人3人以上の立会
・遺言者が遺言内容を口頭で伝える
・証人が内容を筆記して読み聞かせる
・証人が署名捺印をする

この様に遺言者の筆記と押印が要求されません。当然死亡に瀕しているので不可能と考えられるからです。

日付記載の要件もなく、日付がなくても遺言者が有効になります。

②伝染病隔離者の遺言

伝染病のため行政処分により隔離されている者の遺言です。

今回のコロナの騒動では、これが当てはまるのかなと思います。あくまで推測ですので、実際には専門家と相談する必要があります。

要件は本人と筆記者、警察官と証人1人の立会です。

筆記者は誰でも構いません。

実際に隔離されている病院やホテルなどで、証人や警察官を呼ぶことが可能か分かりませんが、隔離されている人でも遺言を作成することができます。

③在船者の遺言

今回横浜で観光船内でコロナが発生して、船から降りられない状況があったことはご存知だと思います。

民法では元々船舶内での遺言作成方式を定めています。

本人と筆記者、船長または事務員1人と証人2人以上の立会で作成することができます。

筆記者は誰でも構いません。

遺言書の確認と検認

前回の記事で遺言書の検認について書きましたが、①の死亡危急者遺言の場合、「確認」という手続きが必要になります。

死亡危急者遺言には本人の署名・捺印がありません。その為、遺言の日から20日以内に家庭裁判所の確認を受けなければ、遺言の効力が発生しません。

家庭裁判所は遺言が遺言者の真意から出たものであるとの心証を得なければ、確認することはできないと規定されています。

有効にならないという事です。

手続きが厳格化されています。検認は証拠保全手続きの一種であったことと比較して貰えればと思います。

 

②の伝染病隔離者の遺言と③の在船者の遺言の場合は確認手続きは不要になります。

こちらは本人がしっかり意思表示が出来る状態なので、確認は不要となります。

 

また特別方式の遺言の場合は検認の手続きも必要になります。

①死亡危急者遺言の場合は、検認と確認の双方の手続きが必要になりますので、注意が必要です。

特別方式遺言の場合の注意点

今回説明した特別方式遺言の場合は、遺言者が普通方式の遺言をすることができるようになってから6カ月生存する時は、効力が生じません。

普通方式の遺言ができるようになったのだから、普通方式の遺言をしないといけないという事です。

死亡に瀕した状態から持ち直したり、伝染病の隔離状態がなくなったりしたら、普通方式の遺言をして下さいということです。

特別方式で作っておしまいというわけではないので、注意が必要です。

 

いかがでしょうか?

今回の記事は特殊な状況下での遺言の作成方式です。

現在の状況にぴったりと当てはまるかどうかは、検討が必要ですが、こういったことも民法には規定されています。

いざという時に困らない様に、日常で元気な時に遺言書を作成するのが一番大事なことです。

心配な方は是非専門家などに相談してみて下さい。