死後事務委任契約について

死後事務委任契約という言葉はご存知でしょうか?

読んで字の如くとはいかず、事務委任契約って何?となる方が大半だと思います。

遺言やエンディングノートなどの終活の一つで、亡くなった後の様々な役所関係の手続き、葬儀の実行、納骨の手配など、人が亡くなった後にやらなければいけない様々な事務処理を、第三者(主に士業)などが行う契約のことをいいます。

通常であれば残された家族が行うことですが、現代社会では様々な生き方をしている人が沢山います。

今までのように、親元で育って、大学に行って、就職して、結婚して、マイホームを購入して、子供が生まれ、いずれ孫が生まれて、老後を過ごすなんていう形ではない環境の方は沢山います。

そんな中で死後事務委任契約という契約が増えてきています。

独身者の死後事務委任契約

ある一定の年齢まで独身、または離婚して子供がいない。両親は他界。一人で暮らしている方も沢山いらっしゃいます。

そのような環境の方の心配事の一つとして、自分に何かあった時、周りの人に迷惑をかけてしまうのではないか?という事があります。

 

もし死んでしまったら、医療費は誰が病院に支払うのだろう?葬儀やお墓はどうするんだ?

今住んでいるこの家はどのように処分すれば良いのか?賃貸契約しているマンションは?

など数え上げればキリがないほど、不安な事があるようです。

 

そのような心配事を解消するために生まれたのが、死後事務委任契約です。

上記に並べた心配事を解消する契約になります。

・死亡当日の緊急対応
・ご遺体の引き取り
・医療費の支払い
・関係者への連絡
・葬儀の実行(喪主もやることもあります)
・遺骨の保管
・納骨
・公的関係書類の提出
・住んでいた家の後処理

その他諸々を事前に契約をしておいて、実際に契約者様が亡くなられてしまった時に、契約内容を実行することになります。

聞いたこともない人は驚かれるかもしれませんが、現在このような契約をする人が増えています。

私が受けた実際の相談例

個人が特定できない様にお話ししますが、実際には下記のような方が契約しています。

60代。ずっと独身で結婚もしていない。現在、将来結婚しようとしているパートナーがいるが、パートナーはバツイチで子供がいて、結婚に子供が反対しているので、結婚の期日は決まっていない。

年齢的にもいつ何があってもおかしくないし、パートナーとはあくまで内縁関係なので、どこまでパートナーが手助け手助けしてくれるか分からなくて、自分のことが心配。

またパートナーにも迷惑をかけたくない。

そこで相談に来られました。

数カ月間何度も相談した結果、遺言書、任意後見契約、死後事務委任契約を締結しました。

遺言書で亡くなった後の財産関係の指示、任意後見契約で認知症等になってしまった時の、財産管理や身上監護、そして亡くなった時の葬儀や納骨など、様々な事務処理を行う契約を、公正証書で契約しました。

現在は毎月1度、決められた日に連絡をもらい、生活に変化がないか連絡を取り合っている状態です。

 

他にも、上記のような内容の契約を親、兄弟と縁を切ったので、第三者である士業にお任せしたいという方と契約をしました。

この方はまだお若く、今すぐにどうこうある年齢ではありませんが、もう一人で生きて行くと強い決心があり、決して人には迷惑をかけたくないし、家族には何もして欲しくないとの事で契約をしました。

多様な生活環境における終活

現在は上記の様な、様々な生活の仕方、生き方があります。

社会的にもLGBTの方の同性婚など、地方自治体が結婚証明書を発行したりする様になってきています。

現在の民法では同性婚は認められていませんし、家族単位での法律構成となっていますので、内縁関係であったとしても相続できなかったりと、色々な問題があります。

その様な環境の中で一人で生きて行きたい、またはパートナーに迷惑をかけたくないという方が増えてきていて、様々な契約やサービスが生まれてきています。

人間はどんな生き方、生活をしていても、いつかは亡くなる時がきます。

その時をどのように迎え、どのような考え方、準備をするのかが、終活の本当の意味する所なのかなと考えています。