遺産分割協議のやり直しには法律上の期限や時効はある?

遺産分割協議をやり直しすることができる時、法律上の期限や時効はあるのでしょうか?

遺産分割協議のやり直しには法律上の期限や時効はない

結論からいうと、遺産分割協議のやり直しに時効や期限はありません
全ての相続人は、他の相続人に対して遺産分割をするように求めることができる遺産分割請求権という権利を持っています。
遺産分割請求権には時効がないため、長い期間話し合いがされなかったとしても、権利が消滅することはなく、これはやり直しについても同様です。
そのため、何年経っても遺産分割協議をやり直すことができるというわけです。

一方、遺産分割協議に取消原因がある場合には時効がありますので、この点は注意が必要です。
取消権については、追認できるようになってから5年が経過すると時効消滅するという規定があります。
「だまされた」「勘違いしていた」「脅されていた」と気づいた時から5年経過すると、取消を原因として遺産分割協議のやり直しはできなくなります。
また、協議が成立した時から20年が経過した時も、取消を原因とするやり直しを行なうことはできません。

遺産分割協議をやり直す場合の注意点

ここまでで、遺産分割協議をやり直すことができるケースやその期限と時効について考えてきました。
では、遺産分割協議をやり直すことができる場合、どんな点に注意しておく必要があるでしょうか?
注意すべきポイントについて、これから考えていきます。

税金に注意が必要

まず、注意すべき点は税金です。
相続人全員の合意で遺産分割協議をやり直すと、譲渡・交換・贈与があったと判断されて課税される場合があります。
税法上は、遺産分割のやり直しという概念はなく、遺産分割後の財産の移動は、新たな取引とみなされます。
遺産が減った人から遺産が増えた人に対する贈与に該当すると判断されたなら贈与税が、譲渡・交換と判断されたなら所得税がかかります。
このように、相続人全員の合意で遺産分割協議をやり直した時は、既に払った相続税に加えて、贈与税や譲渡による所得税などの税金が課されることがあります。

財産に不動産が含まれている場合には、さらに別の種類の税金がかかります。
最初の遺産分割協議の内容に基づいて既に相続登記がなされているなら、一度その登記を抹消した上で、遺産分割後の登記が行われますが、この時に登録免許税がかかります。
また、遺産分割協議のやり直しによる不動産の移動は、贈与や売買扱いとなるため、不動産取得税もかかります。

以上のケースとは異なり、遺産分割協議をやり直しても、税金がかからないこともあります。
遺産分割協議に無効・取り消しの原因があるケースでは、遺産分割後に新たに財産を移転したと評価することはできないので、税金はかかりません。
相続税の申告が済んでいれば、相続税の修正申告や更正請求を行うことになります。

最初の遺産分割後に生じた状況に注意が必要

最初の遺産分割後に、相続財産の売却があった時にも注意が必要です。
既に第三者に不動産を売却し、登記も済ませてしまってからやり直しをすることがありますが、この場合は、たとえ遺産分割協議をやり直しても、第三者から不動産を返還してもらうことは原則できません。
遺産分割協議のやり直しといっても、完全にゼロの状態にできるというわけではありませんので、この点は覚えておく必要があります。

また、最初の遺産分割協議から、かなりの期間が経過した後に遺産分割協議のやり直しをすることがあるかもしれません。
もし、当初の相続人のうちの1人であるAさんが亡くなっていると、Aさんの相続人を含めて遺産分割協議を行う必要があります。
時間が経過すればするほど、相続関係が複雑になり、協議のやり直しは現実的に難しくなっていくでしょう。