遺産分割協議の難しさ

遺産分割協議は難しい。

それは遺産分割=お金の分け方だからです。

いきなりなんのこっちゃと思われたかもしれませんが、世間で言われている相続トラブルの中身は遺産分割協議の不調です。

では遺産分割協議とは何なのか?と、トラブルになる理由をこの記事では説明していきます。

相続人全員での話し合いの難しさ

相続が発生するとその後、相続人全員での話し合いが必要になります。

これを遺産分割協議と言います。

亡くなられた方の財産を誰がどのくらい相続するのかを話し合います。

例えば不動産は長男、預貯金は長女、株式は妻の様に、亡くなれた方の財産のすべてを、誰がどのくらい取得するのかを決めることです。

なぜ遺産分割協議が難しいか?

相続人全員でお金の分け方の話し合いをするからです。

ここに1000万円あったとします。

皆さんも家族でどの様に分けるか話し合ってみて下さい。

単純に平等で分け合うで済みましたか?

子供が大学に入学するから入学費用が必要だから、今回は半分は私に下さいと言う人もいるかもしれませんし、事業が傾いてきたから、1000万全部くれと言う人もいるかもしれません。

この様にお金が絡むと人間は色々か感情が渦巻いて、冷静ではいられなくなります。

このことプラス相続ですと、亡くなられた方への長年の思いなどが、表に出てきますので、もっと難しくなる可能性があります。

介護をした長男と何もしなかった次男。

生前に学費や婚姻費用を出してもらった長女と、学費も婚姻費用も全部自分で払った次女。

この様に同じ子供でも、色々な生き方をしてきていますので、様々な思いが遺産分割協議の時に、表に出てきて、協議がスムーズにいかなくなる例が多いのです。

相続人が認知症の場合

先程お金や家族の感情で、遺産分割協議が上手くいかない話をしました。

次は話し合いが出来ない場合です。

例えば父親が高齢で亡くなった時に、母親が認知症で意思表示が出来ないなんて例も多いと思います。

認知症等で意思表示が出来ない場合は遺産分割協議が出来ません。

「この家は息子の僕がもらいますね、母さん。」

「そうかそうか、わかったよ。」

と仮に言ったとしても、認知症等の時は、それが理解して返事したのかどうか分かりません。

そこで認知症の人を代理する人が必要になるのですが、相続人である子供達は、認知症である母とは相続に関しては利害が対立しますから、代理することはできません。

そこで、家庭裁判所に申立てして、成年後見人を代理人として立てる必要が出てきます。

成年後見人は認知症の方の利益の為に動く事が仕事ですから、遺産分割の分け方で色々制約が出てきます。

そもそも家族間の話し合いに他人である弁護士や司法書士が入り込んでくるのです。

話しづらくなるのは当然ですよね。

もちろん第三者がいるおかげで、お互い冷静になって話し合いが出来る場合もあると思いますので、マイナス面だけではありません。

ただ家族の中での話し合いに外部から人がくるのですから、より話し合いが難しくなるのは間違いないでしょう。

他にも相続人に未成年がいる場合も代理人が必要になります。

子供が19歳でも1歳でも同じように代理人が必要です。

この場合は特別代理人と言って、相続人以外から家庭裁判所で選任されます。

認知症の時と同じ様に、協議が難しくなる可能性は高まります。

相続人が海外在住の場合

これだけ働き方や生き方が多様化した中では、相続人が海外に在住していて、日本に住所がない人も少なくありません。

この場合はどうやって遺産分割協議すれば良いのでしょうか?

日本の場合は実印登録などをしていて、印鑑登録証明書を取るのが難しくありませんが、海外の場合は印鑑登録証明書などは基本的にありません。

そこで必要になるのが、サイン証明書や在留証明書です。

サイン証明書は印鑑登録証明書の代わり、在留証明書は住民票の代わりと考えて貰えれば思います。

これらは海外にいる相続人に大使館等で取得してもらう事になります。

その上、海外ですから、書類に不備があったりすれば、時間や費用などが、国内だけの相続に比べ、格段に難易度があがります。

しかも面と向かって話し合う事も海外在住ですと、難しかったりしますので、いっそう遺産分割協議が難しくなってきます。

遺産分割協議をしないのが大切な家族のため

この様に遺産分割協議は様々なことが考えられ、簡単にはいきません。

そこで必要になるのが遺言書になります。

遺言書を作成することで、遺産分割協議をせずに、相続手続きを進める事が出来るようになります。

大切な家族への思いやりとして、家族に遺産分割協議をさせない様にするのは、とても大切なことになります。