遺言書作るときは、遺留分に注意!

今回は遺留分について説明していきます。

遺留分という制度

遺留分という言葉はご存知でしょうか?

遺留分は遺言を作るときに、とても重要な意味を持ってきます。

知らないで遺言書を作ってしまうと、せっかく遺言書作ったのにトラブルの元になってしまう可能性もあります。

では遺留分とは何でしょうか?

民法に定められた相続人に認められた一定の権利のことです。

例えば、父、母、長男、長女の4人家族の父が愛人に全財産を遺贈する旨の遺言書を作って、亡くなってしまったらどうでしょうか?

母と子供達は父名義の一戸建てに住んでいるとします。

全財産が愛人にものになりますので、残された家族は住むところを失ってしまいます。

それでも遺言の内容は自由ですから、この内容の遺言も有効です。

 

また母が専業主婦で、子供たちはまだ未成年だとするとどうなるでしょう?

専業主婦だった母名義の預貯金はわずかしかありません。子供たちにはこづかい程度のお金しかありません。

でも事情どうあれ、遺言は有効ですので、父の残した一戸建ての不動産や、預貯金はすべて愛人のものになります。

これが遺言の効果です。あくまで遺言者の意思が優先されます。

 

でもこうなると、残された家族は、生活保護を受けて、国や市に頼るしかなくなってしまいます。

当然税金を使って保護することになります。

国も変な遺言を書く人がいる度に、税金を使わないといけなくなりますので、遺留分という制度を作りました。

 

簡単に言うと遺留分とは、上記の様な遺言があった際に、残された家族に一定分の相続を認めたものです。

遺言者の相続財産の半分にあたる分は、残された相続人のものになります。

4人家族の先ほどの例でいうと、母4分の1、長男8分の1、長女8分の1で、相続財産の半分を手に入れることができます。

その割合を元に遺留分の計算をします。

そうすれば残された家族が路頭に迷う可能性は少なくなるだろうという、政策上の配慮になります。

そのため、遺言書で愛人に全財産を贈与すると書いても、愛人は半分を取得するにとどまるという事です。

あくまで遺留分は相続人が請求してはじめて現実化する権利ですので、残された家族たちが一銭もいらないとなれば、すべての財産は愛人のものになります。

この様に、遺留分の制度は路頭に迷う家族をなくすための制度です。特に遺言を作る時に大切な考え方になってきます。

遺留分制度を考えた上での遺言作成

ではどのような事に注意していけばよいでしょうか?

遺留分は兄弟姉妹を除く相続人に権利があります。

 

兄弟姉妹が相続人の場合は、遺言を作り、兄弟姉妹に財産がいかない内容にすれば、問題ありません。

兄弟姉妹には遺留分はありませんので、請求する権利がありません。

問題は配偶者と子供、そして親が相続人の場合です。

仮に先ほどの例の様な4人家族で、配偶者に全財産を残すという遺言をした場合、子供達に遺留分の権利があります。

子供達が何も請求しなければ、問題ありませんが、子供と仲違いしている場合などは、子供から請求する権利があります。

子供にはどうしても財産を残したくないと思ったとしても、この権利を奪う事はできません。

唯一の方法としては、遺留分の放棄をしてもらうことですが、揉めている家族だと難しいことだと思います。

 

遺言を作る側としては、遺留分が請求される可能性があることを考慮した遺言を作る必要があります。

例えば、相続財産はすべて配偶者に相続させる。配偶者は財産を相続するが、負担として、遺留分に相当する金額を子供に支払うなど、内容を吟味して作らないといけません。

この制度は相続欠格や相続排除という民法で定められた相続する権利がなくなる方法以外は、奪う事はできません。

仲が悪いとか、疎遠であるとか、遺留分を払ってしまっては、配偶者が生活ができないといった理由があっても権利を無くせませんので、慎重に検討する必要があります。

このように、遺留分という制度は、遺言者の意思とは無関係に発生するものですで、遺言書を作成するときは、専門家に相談するのが一番の方法だと思います。