法務局での自筆証書遺言の保管制度 2020年相続法改正

今回は2020年7月10日スタートの自筆証書の法務局での保管制度について、説明していきます。

まずは自筆証書遺言について解説します。

自筆証書遺言とは

遺言は、遺言者が自分の死後にどのように財産分けをするかなどを、あらかじめ指示しておき、死後に効果が発生するようにした書面です。

効果が発生する時には、遺言者は死亡しているため、民法に定められた方式でしか、遺言書は作成できません。

定められた方式で作成する中で、よく使われている制度が、公正証書遺言と自筆証書遺言になります。

公正証書遺言は公証役場で作成する遺言になります。

今回説明する自筆証書遺言は、自宅で自分で作成する遺言です。

自筆証書遺言のルール

1.全文、日付、氏名を自署します。
2.押印が必要です。

具体例

 

遺言書

私は妻に全財産を相続させます。

令和2年6月20日 山田 太郎 印

 

上記文面を紙に書いて押印すれば、自筆証書遺言の完成です。

結構お手軽です。

ただお手軽な反面、デメリットもあります。

自筆証書遺言のデメリット

自宅で一人で書けるため、法律的なチェックが入らない。
⇒相続法の知識なく作成すると、希望していた法的効果が発生しない可能性が高くなる。

紙に書いて保管しているだけなので、紛失・改ざんなどの恐れがある。
⇒紛失したり、文字が見えなくなったら、遺言書がないのと同じ状況になります。

長い文章を全文自署するのは大変
⇒例文のようなシンプルな文面なら問題ないが、財産が多かったり、複雑な場合は全文自署はとてもしんどい。

家庭裁判所での「検認(けんにん)」が必要
⇒公正証書遺言と違い、相続発生後、家庭裁判所に提出して、証拠保全手続きである「検認」が必要になる。検認していないと、相続登記や金融機関の解約手続きに使えない。

上記の様なデメリットがあります。

 

そこで今回の改正でデメリットを補完する制度ができました。

それが法務局での自筆証書遺言の保管制度です。

 

自筆証書遺言の法務局保管制度

自筆証書遺言を法務局が保管してくれる
⇒紛失、改ざんの恐れがなくなる

家庭裁判所での検認が不要になる
⇒公正証書遺言と同じように、家庭裁判所に提出することなく、相続登記や金融機関での解約手続きに使える様になる。

 

上記を説明していきます。

自筆証書遺言は気軽に書ける半面、保管場所等に困ることがありました。

子供達には内緒で作成したけど、保管場所によっては、家族に簡単にばれてしまいます。

簡単にばれてしまうということは、遺言書の内容が相続人に不利になるような場合、捨てられたり、改ざんされてしまうリスクもあります。

また一人暮らしの場合など、相続人に発見されないまま、処分されてしまう可能性もありました。

それが今回の改正で、法務局で保管してくれる様になったので、上記の恐れがなくなります。

遺言書を保管している証明書も発行もできますし、相続人が内容を改ざんしてしまうリスクもなくなりました。

またこの制度を使った場合、家庭裁判所での検認も不要になりました。

検認は結構面倒な制度なんです。

遺言者の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍等を集めて、家庭裁判所に提出して、提出してから1カ月から2か月待たないと、検認作業は終わりません。

すぐに相続手続きしたくても、検認が終わるまで相続手続きが出来ませんでした。

これが今回の制度を使うことで、検認が不要になりましたので、スムーズに相続手続きをすすめることができます。

 

自筆証書遺言の法務局保管の概要

遺言者本人が管轄法務局へ提出の必須⇒住所地、本籍地、不動産の所在地の法務局が管轄です。

手数料は3900円

保管証明書や閲覧請求も可能

申請時には事前に予約が必要

2020年7月10日よりスタート。7月1日より予約開始。

まとめ

このブログの以前の記事でも何度も書いていますが、遺言書の作成は、相続トラブルを防ぐ最低限の作業であり、また最大の効果を発生させます。

自筆証書遺言でも公正証書遺言でも、遺言の効果は変わりません。

自筆証書遺言はデメリットも多かったのですが、今回の制度改正でデメリットが解消された部分もあります。

遺言書を作成することが、残された家族への思いやりになりますので、一人でも多くの人が遺言書を作成してくれればと思っております。