平成28年の経済センサスによると、平成28年当時日本には約385万企業の事業主体があり、そのうち197万件が個人企業(いわゆる自営業者)であり、そして、全企業における個人企業の占める割合は51.3%となっています。
このように事業主体の半数以上が個人事業主というのが日本の現状です。
かくいう私たちのような行政書士も大多数が個人企業です。
自らのことも踏まえて、なぜ個人事業主の相続対策が重要なのかを一緒に考えてみましょう。
自営業者に相続が発生すると
法人化していたら
事業主体が株式会社や合同会社などの法人にしており、そして社長が亡くなったとしましょう。
社長個人の資産は相続人が相続で取得しますし、例えば会社名義の不動産は社長が亡くなったとしても会社が存続する限り会社名義のままです。
社長が亡くなったとしても新しい社長を選任し、会社は運営されていきます。
社長の相続人からしたら社長の持ち株を相続するだけということになります。
このように株式会社など法人化された事業主体では、社長個人の財産と法人の財産は分離されています。
自営業者の場合
では、自営業者に相続が発生するとどうなるのでしょうか。
例えば事業所の不動産、賃貸ならその賃借権、預貯金にしても個人企業である事業主体と事業主が分離されていないので、すべてが相続されることになります。
つまり、事業をするために借り入れた負債も、事業資金のための預貯金などもすべてが相続されることになります。
子どもなどの跡を継ぐ人物がいない場合は相続人が事業所をたたむか、誰かに任せて運営してもらうか、売却するなどが考えられます。
ただ、従業員がいる場合など簡単にたたむことができないということも十分にあり得ます。
事業資金にしても事業資産と個人資産と一緒に相続されてしまためきちんと通帳を分けていたとしてもすべてが相続税の課税の範囲となります。
また、相続人のだれかが事業を引き継ぐ場合、引き継ぐ相続人は当然のことながら事業用の資産を引き継ぐことを主張するでしょう。
そうなると、多額の事業用資産をもらえる後継者となる相続人と、少ない遺産額しかもらえない他の相続人間では不均衡となり争いとなる恐れもあります。
また、設備投資資金などの多額の資金を金融機関から借り入れていた場合、事業主が亡くなった後、事業を継続することができないというのであるならば多額の負債だけが残り、相続人が支払うことができなければすべてを放棄するという相続放棄をしなければならなくなる可能性もあります。
このように、個人事業主は自己の財産と事業用の財産を明確に分類することができないので、様々な問題が発生する可能性があります。
様々な視点で相続対策をしていくことが重要であるといえます。